「中小企業論」では、株式会社シモハマ不動産および Lavender Lab Inc. にて事業に携わる 笠井さくら先生 をお迎えし、「家業を継ぐという選択と、新規事業のリアル」をテーマにご講義いただきました。
まず、笠井先生ご自身のこれまでのキャリアが紹介されました。海外留学や国内外の企業での勤務を経た後、コロナ禍という外的な環境変化を契機に長崎へ戻り、家業である不動産・建設業を継ぐ選択をされたことが語られました。帰郷は当初から予定されていたものではなく、状況に直面しながらも最終的には「自分自身で選び取った決断」であった点が強調されました。あわせて、日本企業と海外企業、さらには地方における働き方や価値観の違いについて、実体験に基づく具体的な比較が示され、正確さや調和を重んじる日本企業、スピードと判断力が求められる海外企業、そして人間関係や信頼を基盤とする地方の特徴が紹介されました。こうした話題を通じて、学生は「どこで、どのように働くのか」という問いを自身の将来と重ねながら考える機会を得ることとなりました。
つづいて、家業を継ぐという選択そのものを起点としたアントレプレナーシップに焦点を当て、Lavender Lab Inc.で取り組まれている新規事業について具体的な事例が紹介されました。笠井先生は、「アトツギ」として親世代との価値観の違いや、すぐには変えられない組織や慣行、感情と経営を同時に担う難しさといった、承継の現場で直面する現実的な課題を率直に語られました。その上で、長崎市の斜面地に多く見られる空き家や使い道の限られた土地に着目し、不利に見える条件や制約を前提として受け入れながら、「誰に、どのような体験を提供するのか」という視点から事業を再構築していったプロセスが示されました。斜面地ならではの景観や非日常性を価値として打ち出す発想と、資金や時間の制約、関係者との調整といった現実に向き合いながら試行錯誤を重ねる姿勢は、「アトツギ」であること自体が新たな価値創造の出発点となり、事業承継と起業家精神が結びつくことで新規事業が育っていくことを強く印象づけるものでした。
この講義を通じて学生は、「起業」とは必ずしもゼロから会社を立ち上げることだけを指すのではなく、既存の事業や地域資源を起点として新たな価値を生み出す営みもまた、アントレプレナーシップであることを具体的に理解することができました。中小企業論で学ぶ理論と、現場での意思決定や行動が結びつく、実践的な学びの機会となりました。
今回の特別講義は、家業承継、新規事業、地域課題、そして起業家精神といったテーマを、実体験に基づいて考える貴重な時間となりました。笠井さくら先生には、ご自身の経験をもとにした率直で示唆に富むご講義をいただき、心より感謝申し上げます。
今後も本学では、理論と実務を往還する学びを通じて、学生が自らの将来や社会との関わり方を主体的に考える機会を提供していきます。